それが今回の懇談会である。 保護者の方も、主旨を理解したのか、懇談会が始まると誰からともなく、自分の子どもの状況、それにどう対処しているかなどを話し出した。
かなり家庭の内情に踏み込んだ話であるが、お互い様なのか、そんな体裁にこだわるより、とにかく話を聞いて欲しいからなのか、みんな篇膳することなく話をしている。 その間、教員はひたすら聞き役である。
不登校や中退といった問題を抱えている親は、その悩みを聞いてくれる相手を探している場合が多い。 そのことは、日ごろから個別に保護者からさまざまな相談を受けている中で気づいていた。
保護者からの相談の電話はとにかく長電話になることが多い。 しかも、ほとんどの場合、一方的に話をする。
こちらはひたすら聞き役に徹する。 それでも電話を切るときには、なぜか問題が解決したかのように明るい口調になっていることが多い。

多くの保護者、特に母親はかなりのストレスを抱え込んでいるのだろう。 しかし、そのことを話すべき相手がいないため、教員に話をしたがる。
本来であれば、父親が相談相手であるべきなのだろうが、父親も仕事が忙しいことを理由に、子どもの問題から逃げているのだろう。 しかし、事前に私から「聞き役に徹して、何もアドバイスをしないように」と言われていたので、何もアドバイスらしい発言はなかった。
後から聞いたところ、アドバイスをしたくても、「話の内容が重たすぎて、何の経験もなく、頭でしか理解していない自分がアドバイスができるような雰囲気ではなかった」と語っていた。 そうなるであろうことは、ある程度予想していたから、聞き役に徹するように指示をしていた。
教員もかなり勉強はしている。 現場で多くの生徒さんと接して、さまざまな相談を受ける中で相当の経験も積んでいる。
しかし、あくまで実体験ではない。 一方、保護者の方は、日々別時間365日の問題である。
しかも、場合によっては生死に関わる問題である。 今回の懇談会に参加されるような保護者の方は、すでにかなりの情報を集め、勉強されているはずである。
そういう方に、一教員が出来ることは、話を聞くことだけである。 それが、限界であり、保護者の方にとっても、最善の方法である。
しかし、それで保護者の方の問題が解決するわけでないことは分かっている。 話をしたこと、同じような悩みを持っている人が他にもいることを知ったことで、とりあえずのストレスは解消されたかも知れない。

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